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現代ヨーロッパ文化論

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現代ヨーロッパ文化論

かつて、科学は社会を発展させ、人間が持つ理性は正しさを導き、世界を支配する——そう信じられてきた時代があり、これらの理念が「西洋近代」を支え、長く人類の信頼の象徴だったわけです。けれど20世紀に入ると、その「あたりまえ」は静かに揺らぎはじめます。戦争が「科学」への信頼を打ち砕き、思想が「人間」という存在を根本から問いただしたのです。現代ヨーロッパ文化論では、そんな「価値の転換」の時代を手がかりに、私たちがどのように世界を見ているのか、そしてその見方がどのように作られてきたのかを考える講義です。20世紀という鏡を通して、「現代」をもう一度見つめ直す時間でもあります。

改めてこの講義では、フランスを中心とした20世紀西ヨーロッパを対象に、「近代」という時代が自らの足場を問い直していったプロセスを学びます。先に記したとおり、19世紀までのヨーロッパでは、「理性」や「進歩」こそが人類を導くという信念が広く共有されていました。しかし20世紀に入ると、その確信は崩れ落ちていきます。価値観や社会構造、芸術や言語学までもが変化し、人間が拠って立つ「世界の見方」そのものが再検討されるようになりました。つまり、ヨーロッパ文化そのものが「自分たちをどう定義するのか」という問いを突きつけられたのです。本講義では、そうした知的運動を以下の6つのトピックからたどります。

  • 「進歩」の崩壊

  • 「人間」概念の見直し

  • 「芸術」の革命

  • 「言語」研究の刷新

  • 構造主義の登場

  • フランス思想のアクチュアリティ

 

それぞれのトピックは異なる領域を扱いながらも、共通して「世界の常識」を問い直します。講義では、これらを順番に「知識として覚える」のではなく、20世紀という時代そのものが抱えた「思考の転換」を体験的に学びます。つまり、変わりゆく時代をただ外から観察するのではなく、その変化の最中にあった人々の「思考」そのものを追体験していきます。

では6つのトピックの中から、とくに当時の価値観を大きく揺るがした「進歩の崩壊」を見てみましょう。20世紀ヨーロッパ——それまで信じられてきた宗教的価値観は、「科学」という新しい「正しさ」に塗り替えられました。それに伴い新しい技術は人々の暮らしを変え、「進歩」という言葉が未来への希望を象徴していた。しかし20世紀に入るとその確信は急速に揺らぎます。「科学」は人間の生活を豊かにしたが、破壊をも可能にした——それが第一次世界大戦です。その現実を前に、ヨーロッパは自らのあり方を問い直すことになります。「進むことは、良くなることなのか」。この問いこそが20世紀の思想を動かす出発点でした。ここから、人間・芸術・言語——あらゆる分野を横断する思考の転換が始まっていくのです。

このように、20世紀のヨーロッパは、西洋が自らのあり方を問い直した時代でした。それまでの価値観を自らの手で壊し、新しい意味を模索した。この思想の転換は、単なる知的な運動ではなく、人間の生き方そのものに関わる変化でした。そして、私たちが生きる21世紀もまた、その延長線上にあります。「現代ヨーロッパ文化論」は、そうした「変化の芽」を見つめるまなざしを養う場です。何かをすぐに肯定・否定するのではなく、「なぜそう考えるようになったのか」という批判的思考を持つ。その姿勢こそが、とめどなく流れる変化の時代を生きるための思考の基盤になるのです。

 

この講義での目標は、過去の知識を覚えることではなく、「いま」を考えるための新しい視点を手に入れることです。私たちの周りには、20世紀が生み出した思想の痕跡が息づいています。たとえば、分類されるアイデンティティ、パーソナライズ化された広告、情報が錯綜するインターネット——人文学とは、そうした「不透明な構造」を読み取るための技術です。まだ語られていないものに気づき、それを自分の言葉で考え直す力。これが人文学の根幹にある知のかたちであり、世界の可能性を見抜くために必要不可欠の営みなのです。

 

この先、未来がどうなるかなんて、誰が断定できるでしょうか。私たちは「いま」を生きているから、同時に存在する「いま」しか目で捉えられません。けれども、予測もつかない未来に向かっているわけですから、目の前にある「いま」すら正確には認識できません。私たちの「いま」は劇的に変化し続けているのに、時間の船に乗っている私たちからはその荒波の全体像を捉えられないからです。捉えられないなら、捉えられないなりに、生きている限り未来の可能性を広げていけばいいと思うのです。その基盤を与えてくれるのが過去を学ぶという態度なのです。この講義は、未来を恐れるあなたの思考が少し自由になる、そんな入り口になると願っています。

さらに興味が湧いた人は…

ここまでの説明を読んで、少しでも興味が湧いた方は,

ぜひ次のページの「『もっと!』現代ヨーロッパ文化論」に進んでください。

この講義ついての理解度、解像度をもっと高めるために、

より具体的に講義内容を紹介しています!

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