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「もっと!」現代ヨーロッパ文化論

ここでは講義の内容をより具体的に紹介していきます。

より明確な講義のビジョンを持ってもらえるかと思います!

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「もっと!」現代ヨーロッパ文化論

現代ヨーロッパ文化論では「揺らぐ時代」20世紀にスポットライトを当て、時系列に沿って、その時代に生じた文化の変革を中心に観察していきます。20世紀は、技術や科学が発展し人々の生活が飛躍的に豊かになった近代と、我々が生きる現代とをかけ渡した時代でした。そんな狭間の時代は、当時の「あたりまえ」が次々と見直された「変化の時代」であり、そしてその特異点は、見直しが「内側から」なされたというところにありました。その時代、その社会を一新する徹底的な再検討を行ったアクターはまさにその渦中を生きた先人たちだったのです。そうした革命は、近代で深く根を張った「あたりまえ」や価値観を、「新たな価値観や在り方」へと変貌させ、私たちが生きる現代にまで影響を与え続けているのです。

 

本講義では以下6つのテーマから様々な分野を横断し、20世紀に生じた「再検討」のプロセスを追体験していきます。

「進歩」の崩壊/「人間」概念の見直し/「芸術」の革命

「言語」研究の刷新/構造主義の登場/フランス思想のアクチュアリティ

前半の講義では「近代」を牽引してきた理念・概念が次々と問い直される時代を、後半の講義では現代の輪郭を捉えつつあった20世紀ヨーロッパに生じた変革について観察していきます。

 

「進歩とは喜ばしいことである」「人間は理性的な生き物だ」「芸術には作者のなんらかの意図が含まれる」——往年「あたりまえ」として受け入れられてきた価値観は、20世紀に転機を迎えました。現代を生きる私たちは、とっくに根付いた「あたりまえ」に疑問を抱いたことがあったでしょうか。それはいわば、出来上がってしまった社会の輪郭を歪ませるような、大それた所業とも言えます。それでも、20世紀を生きた人々は、彼らが生きる時代、つまり彼らにとっての”いま”を、内側から再検討することに踏み出したのです。

 

こうしたダイナミズムの背景にあるのは第一次世界大戦でした。19世紀に飛躍的な進歩を遂げ、人々に恵をもたらした科学技術ですが、数十年後にはその進歩によって人々の命が「効率的に」奪われる事態を招くこととなったのです。

大戦での惨劇を目の当たりにして、常識から違和感を拾い上げた人物がいました。フランスの詩人で文学者、アンドレ・ブルトンです。彼は第一次世界大戦でボロボロになりゆく人々を見て「果たして人間は理性的な生き物であるのか?」と、これまでの常識を疑うようになりました。その疑問を出発点として誕生したのが、新しい文学や芸術の可能性を開拓していく「シュルレアリスム」です。シュルレアリスムでは、人間を動かしている無意識の欲動を形にすることが主題となりました。これは、かつての「人間は理性的な生き物である」というあたりまえがひっくり返り、人間には自分では制御し得ない何か、つまり無意識によって引き起こされる行動がある、という発想が新たに普及したことの現れでもあります。

新たな芸術観誕生の背景にある、こうした「あたりまえ」の見直しに加え、19世紀を象徴する技術革新を見逃すわけにはいきません。写真や録音技術、そうした新しいメディアの登場は「再現」すること、という伝統的な芸術の在り方自体を問い直すきっかけとなりました。「再現能力」の点において卓越したメディアへの対応として、芸術は「再現」とは異なる固有の存在意義を見出そうとしたのです。自覚的に目を向けたのは、創作の基盤となる「メディア」でした。意味の表現や再現ではなく、「メディア」の特質を際立たせる作品が20世紀を彩ったのです。こうして、この時代に誕生したヨーロッパの前衛芸術により芸術的な価値観は根底から覆されていきました。

進歩や人間という存在の問い直しから着想を得たシュルレアリスムの発想は芸術運動にとどまらず、さらに幅広い文化運動を引き起こす大きなきっかけとなりました。

 

彼らが20世紀の「いま」を見つめ直したその延長線上に、私たちが生きる「いま」があるのです。この授業を通して感じてほしいのは先人たちの「すごさ」です。あたりまえを覆した!とかではなくて、骨の髄まで染みついた考えや慣習が蔓延る渦中で、社会、そして当人にとっての常識を「違和感」として指摘できる、そのシャープさを持ち合わせていたことこそが、20世紀の見直しの根底にあったのです。

MBTI診断により一定の枠内に閉じ込められた何億もの人類や、アルゴリズム化という制限の中に生じる一見快適な私たちの選択、SNSで創り上げていくイメージとしての自分——知らぬ間に外的イメージから自分の在り方を決めていく、なんてことがある種の「常識」になりつつあります。うっすらと感じる生きづらさの裏に息づくあたりまえや慣習は、揺るぎないものとは限りません。いま起こりうる変化の潮目に目を向け、抱いた違和感を言語化する。そういった「小さな革命」のビジョンを持つことが必要なのかもしれません。本講義を通してぜひその一歩を踏み出してほしいと思います。

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